◆まずは助成金と補助金の違いから認識する
助成金と補助金の大きな違いは受給までのハードルの高さです。
助成金は、要件を満たせば受給できる可能性が高いですが、補助金は他社とのコンペ形式の為、申請数が多いと倍率も上がります。申請が30社に対し、採択予定件数が10社であれば、20社は審査で落ちてしまうことになります。
補助金の場合は、一か月程度の公募期間を設けるのが一般的です。この期間内に所定の書類を揃え、申請する必要があります。多くの場合は、採択件数に対し、応募件数が上回りますので、提出書類でその妥当性や必要性をアピールできないと、どんなに良い提案をしても採択には至りません。その意味で、補助金の申請に関しては、提出書類の内容が極めて重要であると言えるでしょう。
ちなみに、助成金は主に厚生労働省から発表され、雇用保険料が財源となりますが、補助金は主に経済産業省または地方自治体から発表され、税金が財源となります。
◆事業再構築補助金が始まった経緯
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
事業再構築補助金の需給対象となるのは、コロナの影響で厳しい状況にある中小企業、中堅企業、個人事業主、企業組合等です。申請後、審査委員が審査した上で、予算の範囲内で採択します。
◆補助額について
事業モデルの転換や感染防止等に取り組む中小企業に対して、転換にかかる費用の3分の2を補助し、1社当たり100万~1億円を給付されます。
会社の規模によって上限金額が異なりますし、要件に当てはまれば補助率が4分の3になる場合もありますので、詳しくは最新の公募要領を読むか、専門家に相談することをおすすめします。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
◆対象経費
事業再構築補助金の申請要件は①コロナ以前と比較して売上が減っていること、②認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること、の2つであり、さらに最低賃金枠や緊急対策枠など、枠によって個別の要件を満たす必要があります。補助対象となる費用項目は以下の通りです。
・建物費(新築については必要性が認められた場合に限る。)
・機械装置、システム構築費
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用費
・外注費
・知的財産権等関連経費
・広告宣伝、販売促進費
・研修費(上限額=補助対象経費総額の 3 分の1)
◆スケジュール
採択後のスケジュールについては下図の通りです。採択されたらすぐに補助金が振込されるわけではないため、投資による資金繰りについても事前にしっかり考えておく必要があります。
補助金入金までの資金調達が困難な方向けに「つなぎ融資」についての記事も書いておりますので、詳細についてはコチラをご確認ください。
◆認定支援機関とは
認定支援機関(認定経営革新等支援機関)とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関(税理士、税理士法人、公認会計士、中小企業診断士、商工会・商工会議所、金融機関等)です。
事業再構築補助金を申請する際は、認定支援機関からの確認を受ける必要があり、一般的には認定支援機関に相談しながら新規事業の方針や具体的な取り組みを考えていくとスムーズに申請することが可能となります。
◆良い認定支援機関の見分け方
認定支援機関は、中小企業庁のホームページにて検索することができます。事業をされている都道府県から条件を絞っていくのが良いでしょう。
ただし、すべての認定支援機関が事業再構築補助金の申請を得意としているわけではありませんので、事業再構築補助金の採択率を少しでも上げるためには、同ホームページの支援実績数を参考にすることをおすすめします。
https://www.ninteishien.go.jp/NSK_CertificationArea
良い認定支援機関は、
①書類作成支援だけでなく、ハイレベルな「経営支援」が包括的にできる。
②公表できる実績が豊富で、営業活動を行なっていないのに忙しい。
③特定外の「複数」機関やネットワークから信頼され、ご相談を受けている。などの特徴があります。
◆不適切な支援機関にご注意ください。
近年、事業再構築補助金のニーズが高まっていることを良いことに、不適切な支援機関も増えております。採択実績を誇張して宣伝していたり、他の認定支援機関に横流しするだけで本人は何もしていなかったりなど、手口は様々です。
上記のような支援機関ではないことを確認するためにも、中小企業庁の認定支援機関検索ページにて、その支援機関名義で十分な実績があることを確認することが重要になります。
――廣岡事務所の紹介――
◆業務内容
当事務所も認定支援機関ですが、7次事業再構築補助金までの累計支援実績数67件のうち65件が採択されていますので、採択率は97.0%です。
一方、各認定支援機関の平均採択率は35~59%です。自社メンバーで計画策定・申請している認定支援機関としては、当事務所は採択数と採択率で総合的に日本一の支援実績があると自負しております。
https://ninteishien.force.com/NSK_CertifiedRecordView?id=a0D1000001LVJs1EAH
▼当事務所の採択実績
▼認定支援機関別の採択実績
また、当事務所は補助金の実績が目立ちますが、もともとは創業支援や改善支援(405事業)などを得意としており、その資金調達方法の1つの手段として補助金を活用しております。
もともと支援していた顧客の補助金ニーズが高かったため補助金申請のサポートを重ねた結果、補助金申請も得意になった、という経緯があります。
◆メンバー紹介
所長 廣岡
従業員 mio、SHOKO、KIYO
サポートメンバー ⇧P、たはにゃん、けいけい☆、もりけん、はばにゃん、まつも
当事務所は大阪府守口市というベッドタウンに所在しております。創業当初から支えてくれている従業員に加えて、登録して間もない若き診断士たちにも協力してもらいつつ実力をつけてもらい、常に高品質なサポートができる体制を構築しています。
◆厳選!記憶に残る再構築事例紹介
採択例① 既存:創作料理店⇒新規:自家製納豆製造所兼販売所 / byけいけい☆先生
地域密着の創作料理店(=既存事業)が、店舗で好評だった自家製納豆の店舗外販売を開始する為に、新たに製造所兼販売所を設けるとともにEC販売を行うことで事業の再構築を図るものでした。
コロナにより来店が見込めない中、大阪市内では30年ぶりの納豆製造事業者として事業を開始することで自社納豆のブランド化を図り、コロナ後には飲食店への顧客の誘引も見込める事業です。
【こういうところに気をつけて支援しています】
採点者は申請者のことを知らない状態から始まります。ですので、初見の方でも申請事業者のことがよくわかり、感情移入できるように事業の成り立ちや想いを表現するように記入するとともに、専門用語の使用は避け、使う場合でも注釈を入れるようにしています。
審査項目に対して漏れなく網羅し、一読した審査官が思わず支援してあげたくなるような計画書を作成すること。これが採択の一番の近道です。
また事業再構築補助金では、SWOT分析を行うことが求められています。『既存事業の強みを活かし、既存事業の弱みを克服し、既存事業の脅威をはねのけるために新規事業を始める機会を掴む』ようなストーリーを意識して作成することが大事です。
不慣れなコンサルが作成した事業計画書では、上記が意識されていない為に、論理が飛躍していたり、新規事業に活かされないSWOTがほとんどであったり、ひどいものでは新規事業のSWOTが記入されていたりします。
廣岡事務所では他社コンサルで不採択であった申請をいくつも採択へ導いています。何度も申請して不採択となっている事業者の方は、コンサルの見直しを検討してみることも重要かと思います。
【こういう点に苦労しました】
相談時点で既に事業が開始されており、実績が出ている事業であること。ここに一番戸惑いました。実は事業再構築補助金はコロナ禍以後に開始した事業であり、公募要項に定められた時点以降の投資であれば審査対象になりえます。
本件事業者はコロナ禍に納豆製造を開始されており、既に納豆製造所自体は稼働済でしたが、今回投資する内容は、事業が軌道に乗り製造能力が不足したために、製造所能力強化と同場所にて販売所を設けるためのものである為、申請要件を満たします。
計画書作成の際は、既に投資済みの設備と、新規に投資する内容を分離して記載するとともにこれまでの実績を表記することで、この事業が再構築事業として成功する理由を詳細に記載させていただきました。
投資タイミングによっては補助金の対象になりえますので、ぜひ一度ご相談ください。
採択事例② 既存:非鉄金属部品製造業 ⇒ 新規:錫製酒器の製造販売 / byたはにゃん先生
生産財のみを扱っていた企業様が、新規事業を以って消費財の市場へ進出するという大胆な事案でした。
コロナ禍により主力製品の自動車用電池部品の売上高が減少し、深刻な影響が出ていたため、金型及び鋳造技術を応用し、新製品の錫製酒器の製造・販売によって一般消費者市場へ進出することで事業の再構築を図りました。
【こういうところに気を付けて支援しています】
この事案では、新規事業の市場規模・人員・設備・資金等の多くの視点から、「新製品を本当に作ることが出来るのか」、「製造した新製品を販売するルートはどのように確保するのか」まで入念に打合せ、調査しました。
事業計画書を作成して終わりではなく、新規事業が実際に自立自走できることに気を付けて書いています。そのために、企業様からのヒアリングを丁寧に行い、二人三脚で計画を立案することで、企業様の特徴を再確認していただき、支援後も企業様が自発的に「さぁ、やるぞ!」と思っていただける計画書の作成支援を心掛けています。
【こういう点に苦労しました】
関係法令の対応および安全性の確保に苦労しました。
鉛(なまり)を主成分とする工業用部品を鋳造している企業様が、錫製酒器を製造する上で乗り越えなくてはならない壁は、「食品衛生法に則った食器としての安全性の確保」でした。
食品衛生法(昭和22年法律第233号)第7条第1項及び第10条の規定に基き定められた、食品・添加物等の規格基準は次の通りです。
食品,添加物等の規格基準(昭和34年12月28日厚生省告示第370号より抜粋)
錫製酒器の生産にあたり、食品衛生法の基準をクリアするために、鉛含有率を0.1%以下にする必要がありました。
錫製酒器の製造時に人体に有害である鉛(なまり)が混入することを防ぐため、既存の主力製品である工業用部品の鋳造で使用している電気炉や杓などの道具を兼用することが出来ませんでした。
そのため、新分野展開のために、既存の生産設備とは別の「錫製酒器専用の生産設備」を用意する必要があり、錫製酒器製造専用の鋳造機一式、釜制御盤、専用杓、および研磨機を導入しました。
また、錫製酒器専用の生産設備は、既存の生産財製造設備から離れた場所に設置したとしても、鉛の粉塵が混入する恐れがありました。
限られた工場敷地内で安全性を確保することが課題でしたが、錫製酒器製造の工程で鉛が混入することを徹底して防ぐために、防塵室(クリーンルーム)を設営し、その中に錫製酒器専用の生産設備を設置することで、外部と完全に隔離することで、何とか乗り越えることが出来ました。
採択事例③ 既存:生鮮魚介卸売業⇒新規:生鮮魚介を使ったおむすびのデリバリー / by⇧P先生
生鮮魚介卸売業を営む企業様が、新型コロナウイルスの影響により、販売先顧客である飲食業者の営業自粛に伴う売上高の減少を受け、近隣テナントを活用した新規事業として、生鮮魚介を使ったおむすびをデリバリー提供する再構築案件です。
【こういうところに気を付けて支援しています】
本補助金の申請を希望されるケースにて、新規事業の骨格は決まっているものの、詳細な計画、集客手段や販売方法が決まり切っていないことが非常に多いため、企業様と打合せ、近隣調査、ターゲット選定を行い、具体的な計画を立案することを心掛けています。
【こういう点に苦労しました】
本件は、打合せ開始時に決まっていることが「①借りる予定の近隣テナント、②飲食物の提供」の2点のみでした。
そのため、訪問、リモート打ち合わせを重ね、近隣調査の上で、ターゲットを「大阪中央卸売市場の労働者」に定め、生鮮卸問屋の強みを活かした「海鮮おにぎり」を、既存事業の市場買い付けに合わせて「デリバリー提供」する計画としました。
打合せの中で一番時間を要したのが集客方法の構築で、顔見知りの卸問屋の労働者へのチラシ配布、市場内に視認性のよい冷蔵自販機の設置、LINE公式アカウントを使ったリピート受注促進を行う仕組みなどを導入することで、2年目開始時に黒字転換、その成功事例をもって、3年間で3店舗まで新規出店していく計画を策定しました。
◆今後について
事業再構築は「今年で最後だろう」と噂されていましたが、2023年度の政府補正予算案を見たところ、おそらく来年も2~3回は継続されるだろうと考えています。
確定情報が出ましたら改めてブログなどでご案内しようと思いますが、何か新たな事業、新たな投資を考えられている方は、補助金の活用をご検討してみてはいかがでしょうか?